Tz日記

Tzと申します。不定期に好きなコンテンツを語ったりします。

はみ出し者たちの理想郷 「はなまるスキップ」

こんにちは。Tzと申します。

突然ですが皆さん、ぽかぽかしていますか?していないと答えたそこの貴方!良くないですね今すぐ「はなまるスキップ」を読んでぽかぽかしましょう。していると答えたそこの貴方!素晴らしいですね今すぐ「はなまるスキップ」を読んでもっとぽかぽかしましょう。そんなわけで今回は「はなまるスキップ」について書いていきます。

 

 

 「はなまるスキップ」とは?

 「はなまるスキップ」とは、つい先日(2021/05/27ぽかぽか記念日)第一巻が発売された「ピクニックによるピクニックのためのピクニック漫画」です。(「はなまるスキップ」第一巻カバー袖より)

www.amazon.co.jp

試しに表紙を見てみると、いかにも和やかにピクニックをしている姿が似合いそうな可愛らしいキャラクターたちが目に入ってくることでしょう。しかし、その印象は第一話から大きく裏切られることとなります。本作の実態は、「それぞれの思惑を胸に集まった問題児たちが、その問題児っぷりを全開にして好き勝手する新感覚ギャグ4コマ」です。聞いただけではよくわからないと思うのでまずは自分の目で確かめてみてください。以下のサイトで7話まで無料で読むことができます。

seiga.nicovideo.jp

本作の特徴については既に多くのブログで詳細かつ愛に満ちた記事が公開されておりますので本記事ではその部分は軽く触れる程度に留め、主に「はなまるスキップ」のテーマとは何なのか?ということについて考えていきたいと思います。

はみ出し者がはみ出し者でいられる世界

「はなまるスキップ」は一見ただ無法者が徒党を組んで無法を働くだけの無秩序なギャグ漫画に見えます。彼女たちは基本的に己の欲望と損得勘定のみで行動しており、良識や順法精神といったものはほとんど持ち合わせておりません。その結果、他人の善意や頑張りを平気で踏み躙ることもあり、そういった部分が暴力的であるという事実は否めないでしょう。しかし自分は、この漫画はそのような攻撃性を面白おかしく取り扱っただけの漫画ではなく、万人が共感できるような普遍的テーマを秘めた漫画であると考えています。以下の二コマはその象徴とも言えるでしょう。

f:id:Tzz:20210602093814j:plain

「はなまるスキップ」第一巻110ページより

 このセリフからは「ありのままを肯定する」という星見はるの、或いはピクニック同好会の理念が読み取れます。

また、原作者であるみくるん先生は「はなまるスキップ」というタイトルの由来について、

「ねすごしちゃっても 授業をスキップしちゃっても みんなはみんなのままではなまるだよ🌸」

という文章であると述べています。

 先ほどの二コマと同じように、この文章からも「ありのままで良い」という強いメッセージを読み取ることができます。「はなまるスキップ」はタイトルの時点で既に一人一人の"ありのまま"に寄り添うという強い意思表明をしていたのです。

そう考えればこの漫画は決してきららにあるまじき異端児などではなく、寧ろ近年のきららに置いて勢いを増しつつある、何かしらの要因で大多数から外れてしまった者たちに寄り添う作風に連なるものであると言えます。「ぼっち・ざ・ろっく!」や「星屑テレパス」が孤独な少女が仲間と巡り会い様々な経験を通して一つの目的に向かって邁進していくようになる様を描いているように、「ななどなどなど」が斜に構えて世の中を見ている少女の日常をコメディチックに表現しつつその根底にある恐れや不安と彼女を取り巻く世界について真摯に向き合っているように、或いは「またぞろ。」が留年という決して取り消すことが出来ない挫折を経験した少女たちがその痛みや自分自身と向き合ったり誤魔化したりしながら少しずつ日々を前に進めていく様を描いているように、「はなまるスキップ」は通常なら世界から弾き出されたり抑圧されたりしていたはずの少女たちの”ありのまま”を肯定し、彼女たちが彼女たちらしく生きられる世界というものを描いているのです。

私は個人的に、この「全てを肯定する」というスタンスこそが多くの人々が「はなまるスキップ」に単なる無法以上のものを感じ取っている原因なのではないかと考えます。我々は多かれ少なかれ「こうしなければいけない」という思いを感じながら生きています。それは課せられたタスクだったり、周りの人々からの同調圧力だったりするかもしれません。そうやって生きている内に周りとずれていたり、能力不足だったりする自分自身のことが嫌になってしまうことも多々あると思います。しかし「はなまるスキップ」の世界は違います。作中において、彼女たちはまさしく純粋な子供の様に全てをむき出しにすることを許容されています。実際に行動に起こした場合については他の誰かの欲望や気持ち程度には存在している法とぶつかり合って阻止されることもありますが、少なくとも己の気持ちも欠点も一切取り繕うことなく表現し、ぶつけ合うことについては認められています……まるで赤ちゃんの様に。

f:id:Tzz:20210603004336j:plain

赤ちゃん。かわいいね。冗談みたいな絵面だが、意外にもはなまるスキップの本質に通じているのかもしれない。

それはただの開き直りに過ぎないのかもしれません。しかし私は、自由奔放に生きている彼女たちの姿を見ているとその蛮行に恐れをなす一方で、なんだかんだ言いながら彼女たちのお互いに本性をぶつけ合える関係に暖かさや小気味良さを感じてもいるのです。社会の中で上手くやっていけない人たちの異常性や欠点も丸ごと受け止める「赦し」の精神が根底にあるからこそ、「はなまるスキップ」は単なる面白暴力漫画に留まらない魅力を得ているのだと私は考えます。

おわりに

まんがタイムきららは非常に競争が激しい雑誌です。多くのファンを抱えた素晴らしい作品が、惜しまれながら2, 3巻で完結する……なんてこともしょっちゅうです。もしこの記事を読んでくれた貴方が少しでも「はなまるスキップ」に興味を抱いたのなら、是非第一巻を購入してみてください。それがこの漫画に対する何よりもの応援になるでしょう。そして一巻を読んでみて何か感じるものがあったのなら、共に雑誌で連載を追いかけましょう。既に何人もの方がそれぞれの記事で触れられていますが、「はなまるスキップ」は作中の時間経過が現実とリンクしている上に、積極的に時事ネタを取り入れていくスタイルなのでリアルタイムで連載を追いかけるのが最も鮮度を失わずに本作を楽しむ方法なのです。更に「COMIC FUZ」という芳文社の公式アプリの月額プランに申し込めば、なんと月たったの500円弱できらら系列の雑誌4つが毎月発売日の0時から読むことができます。現在まんがタイムきららはこの「はなまるスキップ」を始めとして、無印の「星屑テレパス」、「しあわせ鳥見んぐ」、「探偵夢宮さくらの完全敗北」、MAXの「ぬるめた」、「ホレンテ島の魔法使い」、「妖こそ怪異戸籍課へ」、「瑠東さんには敵いません!」、フォワードの「アネモネは熱を帯びる」、キャラットの「またぞろ。」、「ニチアサ以外はやってます!」などなど、単行本未発売~一巻発売くらいの比較的新しい連載が非常に勢いがあり、それ以外にも安定した面白さを誇る数々の漫画が連載されています。(個人的には「ななどなどなど」をもっと沢山の人に読んでもらいたいです。「ななどなどなど」読んでね)この記事を読んで下さったことを切っ掛けに、この圧倒的無法とその裏に隠された優しさの物語、そしてまんがタイムきららの世界全体に魅了される人が少しでも増えてくれることを切に望みます。

それでは本日はこのあたりで。またお会いしましょう。

他の方の素晴らしい記事の数々

note.com

note.com

blog.livedoor.jp

anime-krmax.hatenablog.com

salt-wet.hatenablog.jp

cemetrygates1919.hatenablog.com